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もうひとつの記憶

第5章 君


何故か切り揃えられた黒髪が、目に留まる。
その気配は、彼のものだった。
月明かりの射す公園、男はブランコに座っていた。
暗い赤の瞳。

「〇〇〇だよね、君…。」

つい、溢した確認の言葉。
すると、彼はビクッと全身を揺らせた。
私は、あぁ、やっと会えた。と思って涙を流した。
静かに、涙は頬から首へ伝い、胸まで濡らす。

「〇〇〇!」

堪えられず、私はそっと立ち上がった彼に抱き付いた。
もう、離さない。

「戻ってきたのね、本当に良かった…!」

彼が受け止めてくれた。ぎゅっと抱き留めてくれる。
それが幸せで堪らなかった。
すると、彼の艶のある唇から声が漏れた。

「…アンタ、誰?」
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