第8章 全てを見透かしていた者
移動中の事だった。
「ところで、何故あの時作り笑いだと言ったんだい?」
「あぁホント失礼なことだよね。ごめんね。…何となく、この世界に来た頃の私に見えたんだ」
私は思い出すように視線を落とす。
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拓けた視界に最初に映ったのは、深くフードを被った性別の分からない人だった。
その隣には兎の耳を生やした女の子が立っており、さくらは高揚した。
『何これ!?本物!?可愛い!!』
バッと起き上ってはその長く伸びた耳を両手で掴んだことでロドスを震撼させた。それからさくらは道行く先民の耳や尻尾を掴むとその珍しさに笑っていた。
だが、2日も経てば頭は冷静になって来て、いくら経っても家に帰れないことを知る。
すると、途端に今までしてきたことの無礼を詫び、許されると彼女は気を使ってくる全ての者に愛想を振りまいていた。
だが、最初の印象は悪く、それに加え何もしておらずのうのうと生きているということからロドスの隊員からは忌み嫌われていた。
それも全て我慢すればいつか帰れる。そう願っていたが、それは訪れず、心身ともに疲労していった。
だが、笑顔だけは忘れず、誰にでも優しく接しようと思った。
数日後、それは天使の手によって脆くも崩されてしまったわけだが。
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