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【アクナイ】滑稽な慈悲

第6章 秘めたる力



ドーベルマンは初日、体力の無さに望み薄と感じていた。だが、2日目に筋肉痛で嘆きながらノルマを達成するさくらに関心を寄せていた。

3日目は同じメニューを行い、4日目は事態を今更知ったアドナキエルがさくらに止めるよう促したがさくらはそれを拒否した。その後の体術訓練で見事に一撃を腹に食らって蹲るさくらに、アドナキエルが笑いながらその相手に掴みかかろうとしたが、見ていたスチュワードとメランサが止めに入ったのは言うまでもない。

5日目。ここで新人の訓練生はダレ始めるのだが、さくらは新しい訓練メニューも黙々と終わらせていった。

6日目でおかしいと気付いた。訓練は相変わらずハードであるが、努力の結果がすぐに体に反映されるとは限らない。力こそ一般人のそれ同様だったが、明らかに瞬発力と持久力が向上していたのだ。
地面を蹴って瞬時に懐に入るのは先鋒オペレーターの素質があると考えた。気配や殺気を殺して背後に立つ素質もある。

そして、行動が読めないその動きは新人を一蹴している。2回目の体術訓練では教えた通りのことからそこへどこから習ったか、応用を加えて自分より力が上の相手を地面に倒した。

その調子で1回目の体術訓練にて自分を倒した相手に10秒もかからず報復したのはその場にいた全員が戦慄した。

戦闘モードの彼女の目は真っ直ぐ相手を見つめ、観察して、繰り出す攻撃を特徴的な受け流し方で捌いた後、確実に相手に強烈な一打を繰り出す。相手が膝をつかなければ、もう一打、さらにもう一打と。
その後は必ず対戦相手に謝るコミュニケーション力も持ち合わせている。

そうして彼女の実力を周囲が認め始めた7日目。ついにさくらが訓練の後にドーベルマンに告白したのだ。


「やっぱりこの世界はおかしいです。私如きがこんな俊敏な動きできるはずがありません…」


自分でも自分の異常に気付いていたようだ。

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