第3章 初対面
「おや?大丈夫ですか?」
それに連れて彼もしゃがみ込み、私の肩に手をかけた。
膝を抱えて俯いた私は、自分の意思と関係なくぽつりと本音を呟いてしまった。
「帰りたい…」
ただただ相手を困らせる一言でしかない自己満足の言葉は、拾われることなく空気に解けていくと思っていた。
だが、目の前の天使はニコリと笑ってガッ、と私の顔を挟み込むように両手で掴んで無理矢理に顔を上げられた。
「!?」
頬が潰れるほどの力に驚いたことよりも、首の骨があらぬ音を発したことよりも、目の前の天使が屈託ない笑顔を浮かべていることが理解できなくて困惑した。
「大丈夫ですよ、きっと帰れます」
「っ…」
何の根拠もないその励ましの言葉に妙な腹立ちを覚えて手を振り払って立ち上がった。
「帰ってっ…私の管理なんて必要ない…!!」
「え、あ、ちょっと」
立ち上がった彼の体を敷居より外に押し出して無理矢理にドアを閉めた。
乱れる息のまま、倒れるようにベッドに潜って身を丸めて、溢れ出る涙を枕で拭いながら大きく溜息を吐く。
今日の夜はとても目の冴える出来事に翻弄され、ゆっくりと過ぎて行く時間を貪り、窓の外が明るくなるのを煩わしく思いながら布団を手繰り寄せた。
To be continued.