第4章 復讐者
任務を終えて、シズクはもはや日課となってきた修業に向かっていた。一人歩みを進めるうちにいつしか考え事をしてしまう。昨日の会合でのイタチの様子が気になって頭から離れなかった。
木ノ葉の里の詳細についてはイタチから特に聞かされてはいない。無論、サスケの事もだ。
イタチからは戦災孤児として里に入るように、という命令だけ受けている。その目的は九尾の見張りと木ノ葉の情報を流すことだ。それは孤児として里で生活しつつ、周りを欺くスパイの役目であった。
シズクの主であるイタチは過去にうちは一族を抹殺した犯罪者であり、木ノ葉の裏切り者とされている。そして現在は暁という組織に所属していた。世間では犯罪組織と認知されている集団だ。ゆえに主の存在は他言出来ないのだった。
イタチは里を抜けてもやはり故郷のことが気になるのだろうと思い、変わったことは勿論、感じたこと、気になったこと等も報告しようとシズクは決めていた。それに里で自分に経験を積ませ、成長させようという意図もあるようだ。豊かな木ノ葉なら切磋琢磨出来る環境にあるだろう。
だからこそイタチがどんな組織に加担しようと、どんな命令を下そうと、それに従い、感謝していた。ただ、イタチがサスケの事をどのように思っているのかは分からないままだ。
考え事に耽りながら森に到着すると、そこにはもう修業に励むサスケの姿があった。
「お疲れさま。今日の任務は終わったの?」
「ああ。…お前、昨日どうした?ここには来てたんだろ」
シズクが訪れたことは差し入れで気付いたらしい。
「始めようと思ったら、少し気分が悪くなっちゃって」
笑って嘘をつくシズクに彼は心配そうな表情を見せた。
「あまり無理するな」
その気遣いにチクリと胸が痛む。後ろめたさで返す言葉が出てこず黙ったまま見つめてしまうと、視線に気付いたサスケがこちらを向いた。
「……何だよ」
「サスケ…優しいね」
それは正直な感想だった。嬉しくてにこっと笑うと、サスケはやや赤くなった顔を隠すように背けた。
「俺はただ…隣でお前に倒れられても困ると思っただけだ」