第3章 真の主
サスケに場所を提供してもらい修業を始めてから数日経ったある日、シズクは街で木ノ葉のくの一達に囲まれた。
「あんた…サスケ君と並んで歩いてたらしいけど、どういうつもり?」
こんな風に絡まれるとは、サスケは余程女子に人気があるのだろうか。
「アンタ余所から来たから教えとくわ。サスケ君は成績優秀、容姿端麗、あのうちは出身の天才忍者なの。ふらっと現れたアンタなんかお呼びじゃないのよ」
…え……うちは出身って…
思いがけない所で聞き覚えのあるその名前を出され、心臓がびくっと驚く。
「うちは…?」
「うちはも知らないの!?忍の才能に恵まれた木ノ葉のエリート一族よ」
「分かった?サスケ君には近付かないことねー」
「あんた余所者だから今回は忠告。次はタダじゃおかないから」
シズクを脅して満足したのか、くの一達は去って行った。だがシズクは、脅し文句よりもサスケがうちは出身だという話に動揺していた。
…まさか…うちは一族はもう、木ノ葉にいないはず……
夕方、いつもサスケが修業に来る時間より少し早めにやって来て、シズクは持参した差し入れをそっと置いていく。そしてとある場所へ向かうため、修業の森を後にした。
今日はあの方との会合日…
里の隅のなるべく人通りの少ない場所まで来ると、おもむろに印を結ぶ。術が発動し、シズクは一瞬で里外へ移動していた。そのまま人目につかないよう素早く動く。鬱蒼とした森のはずれ、形に特徴のある岩の陰でひっそりと時を待った。
シズクの術は、こうして一瞬で長距離を移動出来るものだった。これは少し特殊な術で、シズクのいた月の里の者だけが扱える一族秘伝の類いのものである。
この能力を買われてあの方に拾われたんじゃないかとふと思う。けれどそんな事はシズクにとってはどうでもよかった。自分の能力を利用されようと何が目的だろうと、あの方の役に立てることが嬉しかった。
あたしを拾って…助けてくれた人。
しばらくすると、シズクに呼び掛ける声が響いてきた。