第16章 アジト
「シズク、どこへ行くんだ」
「…ごめん…もう行かなきゃ」
向こうであたしを呼んでる班のみんなのところへ…
なるべく従順なフリをしなくてはならないの。
でも、サスケ。あなたを好きな気持ちは本当なんだよ。この感情だけは偽れない。
「…あたし、サスケに会えて良かったって思ってるんだよ」
たとえ別れが来たって。
サスケと出会えない世界のほうがイヤだから。
「俺だって…そう思ってる」
「…ありがと」
「シズク…?一体どうした」
もうきっと、隣で修業できないね。
あたしは木ノ葉に居られなくなる。
なぜなら、
「スパイ…だったのか」
みんなを騙していてごめんなさい…
「…今日お前が俺に言った事、あれも嘘か?」
それは違うよ…嘘な訳ない。サスケを想う気持ちが嘘な訳ないでしょ…
「嘘なのか…?シズク、答えろ!」
はっと目が覚め、急な覚醒に対応しきれず頭を整理しながら現実に戻る。記憶の断片が折り重なり、夢と現実の境界線を曖昧にさせる。
…今のは、夢なの…?そうか、あたしうたた寝しちゃってたんだ。
ここはアジト、暁として活動する主イタチと相方の鬼鮫が拠点として構えている場所だ。アジトでの生活に戻ったシズクは、二人の任務の補助と、食事の用意に掃除洗濯等の家事全般を任されていた。空いた時間には修業をして、二人のいない間の留守番をする日々を送っていた。
木ノ葉を出たあの日から、サスケに会えないままひと月が経とうとしている。一人の時間を持て余し考え事をした時脳裏に浮かんでくるのはいつも、最後にサスケに会ったあの日の場面。彼の問いにも答えられず、大した説明も出来なかった。
あれは木ノ葉を出て数日経った頃だろうか、サスケが木ノ葉の里を抜けたことを耳にした。大蛇丸の元に自ら出向いていったと聞かされている。
何故わざわざ自分から危険に身を投じるのか。何かを探して、得ようとしているのだろうか。それは多分木ノ葉では手に入らないもの。サスケは今もイタチに憎しみを向け、彼を倒す為に力を蓄えているのだ。