第15章 決別
翌日の火影の葬儀でも、絹糸のような細かい雨は降り続いていた。昨夜の指示通りシズクは葬儀に参列した。
ヒタキの言動は正しい。あたしのほうが皆を騙しているんだから…むしろあの二人は、あたしに与えることが許されるギリギリのところまでの優しさをくれたんだ。
葬儀を終え、昨晩の出来事を思い起こしているシズクのもとにサスケが現れた。
「…昨日は散々だったな」
「うん…サスケが無事で良かった」
彼の変わりない姿を見られて安堵する。一方で後ろめたい気持ちを隠すようにシズクは笑みを作った。
ヒタキ達はまだシズクの素性を暴露していないようだった。サスケはいつも通りに接してきている。
「俺はあいつに…我愛羅に勝てなかった……奴を倒したのはナルトだ」
「ナルト君が…?」
ナルトはいつの間にかどんどん強くなっていく印象を受ける。しかしサスケもまた、新技を完成させ強さに磨きをかけている。才能があるだけでなく努力をしてきた結果だ。
「…でもサスケの千鳥だってあの防御を破ったじゃない」
「……なぐさめなくていい」
短く無愛想に吐き捨てた彼の異変にシズクはすぐ気付いた。
サスケ、イライラしてる……もしかしてナルト君の成長に嫉妬してる?
「なぐさめてなんかない、本当のことだし…今の自分が不満なら変えていくしかない、でしょ?」
「…ああ」
言い過ぎたと思ったのか、サスケは今度は素直にシズクの言葉に頷く。
そこへシズクを呼ぶセツナの声が遠くから聞こえた。ヒタキと共にこちらに視線を向けている。
「シズク!何してんだ、行くぞ!」
呼ばれている、もう行かなくては。
このまま、サスケに真実を何も伝えずに?
いや…周りを、サスケを欺いている自分に伝えられる事などありはしない。
にわかに、形のない言い知れぬ不安がじわじわとシズクを襲う。
予感が、していた。
「…あたし、サスケに会えて良かったって思ってるんだよ」