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帰るべき場所

第8章 暖かな夜


 ここ最近、チームで任務や修業を重ねる日々が続いている。なかなか充実したハードな内容で、シズクは帰る頃にはぐったりと疲弊してしまうのが常となっていた。
 それは近々中忍選抜試験が行われるためだった。里の一大イベントのようで、里内外の下忍が多数参加するという。シズク達も試験を受けるため猛特訓を続けていた。
 そんなある日、たまにはサスケに会いたいと思い久し振りに森へ向かったが、道中で雲行きが怪しくなりついに雨が降り出した。降りが激しくなるなか、森の入り口にある大きな木の下へ駆け込もうとすると人影が見えた。

「…あれ?」
「…よお」

 雨宿りをしていたのはサスケだった。これから修業に行くところだったのだろう。顔を見ただけで雨に気落ちした心が軽くなる。
 久々に会えた照れ臭さと緊張で何を話そうか思案していると、先にサスケが唐突な質問をぶつけてきた。

「…お前も参加するのか?」
「中忍試験のこと?うん。受けるつもり」

 今下忍の間でもっぱらの噂となっているのが中忍試験だ。やはり彼もこの話題に興味があるようだった。
 それにナルトの性格上、彼は試験に必ず出場するだろう。そうなればこちらも参加せざるを得ない。ナルトの見張りと里の情報収集、それが本来の自分の仕事だ。

「止みそうにないな…」

 ふと曇天の空を見上げたサスケが呟く。

「…送っていく」

 見切りをつけたのか、もたれていた木の幹から体を離しシズクに視線を寄越した。

「あたしは一人で大丈夫だよ、このくらいの雨…」

 目の前で音を立てて降る雨に思わず言葉が途切れた。術を使えば一瞬で帰れるが、人前であの術を使うのは控えるようにイタチに言われている。それに、自分は帰れてもサスケがずぶ濡れになる。
 どうしようか悩んでいると、サスケが雨の中へすっと足を踏み出した。
















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