• テキストサイズ

Mirror【R18】

第8章 ひと月の性愛


瑞稀とそうなって二週間経つ。
だが、瑞稀は自分からは決して「会おう」とは言わなかった。
「会いたい」とも「好き」とも口にしない。

会いたい、美和がそう言って、それなら遅くなると危ないから、と瑞稀は迎えに来てくれる。

そんなに優しいくせに。
あんなに激しく抱くくせに。

「狡い男だわ」

そんな理不尽な言葉を呟く時、自分は多分瑞稀に囚われかけているのだと思う。


「よし、出来た!」
「帰るの?」
「ん、お疲れ様! これ差し入れ、頑張って」
「サンキュ、美和。 愛してる」

ゼリー状の栄養ドリンクを同僚に放り投げて美和は早足でエレベーターに向かう。


「ごめん、待った!?」
「いや、全然。 お疲れ」

腕を組むと瑞稀の手がひんやりと冷たくなっていた。

「……あたし、瑞稀くんのそういうとこ嫌いだわ」
「?よく分からないがそうなのか」

「なぜ?」も「どこが?」も無い。
美和は組んでいる瑞稀の腕にしがみついた。

「寒い?」

瑞稀は自分のマフラーを外して美和の首にぐるぐると巻き付けた。

「でかいな」

小柄な美和が男物のマフラーで埋もれそうな顔を見て、瑞稀はぷっと笑う。

「嘘だよ。 好きだよ瑞稀くん」
「……そっか」


もうじき雪でも降るのかしら。

あたしは幸せなんだと思う。
この時期に一人なんて堪らないもの。



/ 187ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp