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Mirror【R18】

第14章 余章 ―― 夜話


ある日病院の帰り、大きなオフィスビルに黒塗りの高そうな車が止まっていた。
中から数人のスーツ姿の人が出てきて、私は目を疑った。

「……高雄」

微かな呟きだったが彼も私の姿を見付け、次いで私のお腹を見て目を見開いた。

「遥」

私は慌ててその場から離れようとする。

「遥、待て、…走っちゃ駄目だ」

後ろから胸と腕を抱き止められ、高雄は私を抱いたままゆっくりと座り込んだ。

「遥」

「遥……こんな、あの時の……」

「今まで、一人で……?」

高雄は声を殺してその場で泣いた。

「……許してくれ」

「たか、お」

私は呆然としていた。

高雄の暖かい腕。

「遥、……結婚してくれ、遥」
「……やだよ、今更、責任と…か」

「違う」

「一日たりとも忘れた事は無い。 ……後悔しない日は、無かった」

「遥、……愛してる」


私はあの時の、あの言葉を繰り返し考えていた。

高雄は確かに言った。

『君を、喰わなくて良かった』


でも、そんな事はどうでもいい。

私は、高雄以外には何も要らない。





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