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Mirror【R18】

第12章 春へ


退院した翌日の夕方、瑞稀が訪ねてきた。

「腕の調子はどうだ?」
「うん、大丈夫。 二週間後に抜糸って。 家の事は逸巳が色々してくれるし」
「じゃ俺は風呂でも入れてあげようか?」

……絶対面白がってる、この人。

「要らない、……っていうか、昨日のあれ!」

瑞稀は真っ赤になって手を振り上げる澤子を抱き締める。

「冗談。 心配した」
「……こっちこそ」

以前より、瑞稀の身体が少し細くなっている様な気がする。

「もうどこにも行かないで」
「分かった、……と」

突然瑞稀がぱっと離れた。

「瑞稀さん?」
「怖くない? こういうの」
「え、今更?」
「今更って……」

「いや、俺、知らなくて。 今まで色々してごめん」

瑞稀が少し困ったような顔をしている。
私の身体の事を心配してくれているらしい。
昨日あんな事しといて、本当に今更だと思うけど。

澤子は瑞稀に歩み寄ってその背中に手を回した。

「言ったと思うけど、瑞稀さんなら大丈夫」
「そっか? でも俺も言ったと思うけど、無理強いはしないから」
「うん」

瑞稀が澤子の髪を撫でている。
怖いどころか、気持ちがいい。

「キスはするけど」
「でも、瑞稀さんのって……」
「栄養補給兼、澤子のリハビリ」
「栄養……?」
「こっちの都合」
「……まだあるの」
「子供は知らなくていい」

子供って……


「……僕、いつになったら家に入れるんだろーな?」

独り言のような声が聞こえて、見ると逸巳が門戸で後ろを向きながら所在無さげに立っている。

「ご、ごめんなさい」



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