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イカロスの翼【ヒロアカ】

第16章 なりたかったもの




同時刻。
仮想都市の一画で、雄英高校の轟と士傑高校の夜嵐は戦闘を続けていた。


「いぃいくぞ轟ィー!!次は竜巻だァア!!!」
「…風は効かねえって言ってんだろ…!」


轟の氷結攻撃は夜嵐の浮遊能力に軽々回避され、夜嵐の突風攻撃は轟の炎熱攻撃で易々と方向を変えられてしまう。
ジリ貧の攻防をし続けて、既に数十分が経過した。
お互いが攻めあぐねた結果。
不慣れな肉弾戦へと雪崩れ込みそうになった、その時だった。


「……なんだ?」
「ム!?」


突然動きを止めた轟を見て、夜嵐も身体を硬直させた。
轟は夜嵐から視線を逸らし、遠くの方を見つめ、棒立ち状態になってしまう。


「どうした轟!?いいんスか、このままだとオレ、アンタのこと殴っちゃうっスよ!!?」
「……おい、なんか音がしねぇか」
「オレの腹の音だ!!スマン、寝坊して朝飯食い損ねたっス!!」
「いや、そうじゃねぇ。もっと…腹に響くような…」
「オレの腹が響いてるんスよ!!スマン!!!」
「違ぇ、だからそうじゃねぇ。地響きに似たような」


爆発音に、似たような。
轟がそう呟いた。
すると、夜嵐の耳にも遠くの建物の崩壊音が聞こえ始めた。
二人で耳を澄ませるうちに、その音はさらに激しさを増し、やがて二人の身近に危険を孕んで迫ってきた。


「「……ッ!?」」


ゴシャアア、という複数の金属が擦れる音と、瓦礫の落下音が入り混じり、つんざくような不協和音が二人の耳に飛び込んでくる。
轟と夜嵐が身の危険を察知し、身構えた直後だった。
建物の間から熱風が駆け抜け。
瓦礫の波と土煙が辺り一面を支配し、二人諸共、周りの建物を巻き込んで瓦礫の山へと景色を塗り替えていく。


「轟、オレに掴まれ!!!」
「危ねぇ!!!」


瓦礫に飲み込まれる直前。
夜嵐が突風を撃ち出し、一瞬の猶予を作り出した。
その瞬間に轟は持ち得る限りの力を振り絞り、分厚い氷壁を瓦礫の波と二人の間に生み出した。
ギャギャギャギャという瓦礫が氷壁を削る音が数秒間周囲に鳴り続け、ようやく土煙が晴れて。
爆発が起こった方向に一体何があったのか。
轟と夜嵐は、目にすることができた。





廃墟と化した街並みに、佇む誰かの立ち姿。
既視感のあるその光景。
一瞬ゾッとして。
轟は彼女の名前を呼んだ。





「…」



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