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暁の契りと桃色の在り処 ー紅ー

第5章 その軍議、天守にて。


『では、今日の軍議は終いだ。』

信長の静かな声が広間に響き、武将達が頭を下げる。
末席のあさひも、静かに頭を下げて、
ふぅ。と息を吐いた。

「いつになっても軍議は緊張するな。」

ボソッと呟くと、くしゃっと頭を撫でられた。

「秀吉さん!」

『疲れたか?』

「ううん。軍議は今でも緊張しちゃうから、つい。」

『ほぅ。ただ、足が痺れただけではないのか?』

からかう意地悪な光秀の視線に、あさひが反応する。

「もぅ、光秀さんの意地悪。」

『光秀、そのくらいにしろ。ところであさひ、今日も針り子部屋か?』

「うん、頼まれた仕立てとかやること沢山なんだ。お昼までずっとかも。」

『…そうか。無理するなよ。それと、いつも通り昼げは広間だから遅れるなよ。』

「わかった。」

にこりと笑って頷くと、あさひはパタパタと針り子部屋へ向かっていった。

秀吉と光秀はそれを見送った後、視線を一瞬合わせてから天守へと向かった。

※※※※※


『皆、集まったか?』

『はっ。』

『あさひには見付からなかっただろうな?』

『はっ。御館様、あさひは昼まで針り子の仕事が忙しいと先程申しておりました。』

『秀吉、お前にしては、上手いこと聞き出せたな。』

ククッと光秀が笑った。

『はぁ、もう始めましょうよ。』

『あぁ、今日は昼げの後の甘味を作るんだ。
信長様、話を進めましょう。』

『あぁ、そうだな。』

信長が姿勢をただす。
武将達もグッと信長に体を向けた。

『馬上でも話したが、もうすぐあさひがこの世に来て一年だ。それを記念日とし、さぷらいずに宴を行いたい。』

『…御館様、まず記念日とは?』

『さ、ぷらい、ず? なんですか、それ?』

『秀吉、家康、よい質問だ。記念日とはな、あさひの世の言葉で…』

ゆっくりとたどたどしいが、あさひが話したように信長が説明する。

『大切な日って事ですね。』

『三成、御館様の説明を簡単にまとめすぎだ。』

『では…さ、ぷら、いずは何でしょう?』

秀吉の注意を聞いていない様子の三成の目は、興味津々といった様子で、信長に向けていた。

『さぷらいず、だ。それはな…』

またゆっくりと信長が話し出した。


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