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もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第10章 落魄



「智………。

ちょっと待ってて、今ボールを返しちゃうから」

片手で智の細いウエストを抱いたまま
翔は手に持っていたボールをグラウンドに
向かって大きく投げた。

それを追って、智も視線を上げる。
青い空に吸い込まれていく
ボールを見ながら……

「キレイ……」

と、智は呟いた。

雲一つない澄み切ったキレイな青空に

吹き寄せる秋の風が

こんなにも心地よく智の頬を撫でた。

ああ……、世界はこんなに美しかったんだ。

ようやく最後にそのことを
想い出すことができた……

(神様最後に、こんな素晴らしい幻影を
見せてくれてありがとう……

このまま翔の幻に抱かれて………………)

目の前がしだいに霞んでいく

頭がグラっとして……

せっかく見えた翔の幻影がぼやけていく……

「や……ヤダ………………

消えないでぇ………………!!!!」

必死に叫んだのに
声は妙に掠れ思いどうりに出すこともできなく
消えていく………………。



「智ーーー…!?」

抱き締めてくれる腕は、
確かに翔の腕なのに………………。


(お願い……
このまま、翔に抱かれながら死なせてーーー)



そうして、智は微かな微笑みさえ浮かべながら
闇の世界へ落ちていったーーーー……。


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