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もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第9章 夢浮橋



救急車で向かった総合病院だった。

廊下の突き当りに煌々と灯る
手術中のランプを見つめながら
智はウロウロとその場を歩き続けていた。

「智さん、ここに座って?」

ベンチに腰掛けた雅紀が何度も声をかけるが
智の耳には、雅紀の声などまったく届く様子は
なかった。

(どうして?
どうしてこんなことに………?)

処置室で治療を受けている武井の方は
ガラスの破片によるかすり傷だけで
縫う必要さえないほどの軽傷だったと
聞かされた。

「どうして……翔だけがーーー…?」

破れたジーンズから流れ出していた血を
思い出すたびに、
身体が冷たくなっていく。

膝……?

腿か……?

それとも………ふくらはぎなのか?

どちらにしても、サッカー選手として一番大事な
足を傷つけてしまったことは明確だった。

「俺のせいだ………」

我知らず漏れる呟きは………
自らに対する叱責だった…………。


「俺が悪いんだ……
翔の気持ちを試すようなことを

したから………

俺が………」
「やめなよ」

雅紀が、そんな泣き言はダメだよと
言わんばかり、口を挟む。

「智さん…それを言ってどうなるの?
まだ、手術の結果は出でないんだよ。

それとも、自分が楽になりたいから?
だから、勝手に加害者ぶるんだったら
それは違うと思うよ……。」



「自分が……楽になるためーー…?」

「だってそうでしょう。
今、一番辛い思いをしているのは誰だと思う?」
「………………」
「わかるよね。一番辛いのは翔先輩なんだよ。
そんなことも忘れて、自分のせいだと
思い込むことで、辛さを共有した気になってる
だけだと俺は思うよ。」


「……そんなぁ……」



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