• テキストサイズ

もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第7章 雲隠れ



市街地の騒々しさを嫌う妻の為に建てた
相葉の屋敷は、中心市街から車で
2時間ほどの郊外にあった。

700坪もある敷地は高く鉄柵に囲まれて
外部と隔絶され緑豊かな空間になっていた。

その建物は、イギリス有名建築家による
西洋文化と 日本庭園も取り入れた洋と和の
ハーモニー が心地よく安らぎを
与えてくれそうな、
そんな旧古河虎之助邸のような建物だった。

そんな中、雰囲気を台無しにするような
怒声が響きわたっていた。


「翔が来ない!
翔が来ない!!
翔が来ない!!!!
翔が来ないぃぃぃぃぃ~!」

あまりに広い庭で、
智は人目がないのをいいことに
やけっぱちでわめいていた。

理由は簡単なこと、翔が来ないからだ。

あれからもう四日になるのに、
連絡1つよこさない。

伊野尾が、あれやこれや策を巡らせて
翔を引き留めているのか?

それとも、今は大事な時期だから、
拗ねてしまった年上の恋のご機嫌取りなんか
している時間はないと、開き直って
練習に勤しんでいるのか?

だけど、マジメな翔があんなケンカ別れを
した後で智を捜さないわけがない。

きっとマンションを訪ねただろう………
だけど、部屋はもぬけの殻。
和也のところも留守なのも確認済みのはず………
そうしたら、智が逃げ込みそうな場所なんて
簡単に見つけられるはずなのに………

電話一つもないなんて……
絶対に妙な話なんだよ。

そりゃあ携帯の電源は切ってるけど……

でも、相葉の屋敷には、
電話なんて腐るほどある。
最悪、翔から雅紀に連絡して、
ここのお屋敷に繋いでくれたって
いいと思うけど………

そんな電話もない………
叔父が意地悪をして電話を取り次いで
くれないのかも思って、
こっそりと家の中の者には
念を押しておいた。

「たとえ叔父の命令でも、翔からの電話を
俺に回さなかったら、
世にも恐ろしいことが起こるよ!!!」

と、そんな幼稚な言葉だけど、
自分が叔父から溺愛されていることは、
皆が重々承知している。











/ 238ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp