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もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第5章 窮鼠猫を嚙む



拭っても…

拭っても………………溢れてくる涙。

たかがこれしきりのことで。
だれど、何より許せなかったこと。

どんな理由であっても
自分の存在が伊野尾より下に置かれたことが
許せなかった……。

恋人って、誰よりも自分を大切にしてくれて
優先してくれるってそう願っていた。

それが、後回しにされてしまったのだ。

きっとこの先も翔は同じことを繰り返すのだろう
そのたびに、また、惨めな気持ちを繰り返されるのだろう。


何度も、何度も………………
友人のために、家族のために、
夢のためにーーー…。

智以外にもたくさんの大切なものを
持っている翔は、
それが智にとってどれほど負担になっているかを
知らず、意識もせずにひたすらに我慢を
智に押しつけてくるのだろう………………。

優しい男。
優しい男。





優しい男………………。

そう、誰にでも優しい男ーーー!

そんな男はいらないんだ。
俺にだけ優しくしてくれる男がいい。

俺を、たかがクラブの仲間と比べるような男は
こっちから見極めをつけてやる。


そう心に誓いながらも………………

「どこへ行こう………………?」

とタクシーの運転手に向かって問いかける。






もはや翔の腕の中以外には、
心落ち着かせられる場所はない…



そう、行くところなんか
思いつくわけがないのだから………………。

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