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もっと。

第1章 もっと。



「監督生さん、先日の上書きをさせて頂けますか?」


「上書き…?」


「えぇ。今夜、モストロラウンジでお待ちしていますね。」


そう言ってジェイド先輩は言ってしまった。
はて、上書きとは何のことだろう。


先日の一件があってから、私とジェイド先輩はお互いの不安を取り除くように、本音で話をする事ができるようになった。選択授業で隣の席になると、こっそり机の下で手を握ってくれたり、キスもできるようになった。

私とグリムをラウンジに招待してくれて、念願のデザートも食べる事ができた。

「じゃぁグリム、行ってくるね。」

グリムの食事を用意して、モストロラウンジへと向かう。

「なんか静か…」

お店の前まで来ると、中は誰もいないようで、ガランとしていた。よく見ると、今日は閉店時間が1時間早かったようだ。時間を間違えたかと引き返そうとすると、戸が空いて「お待ちしていました、どうぞ。」とジェイド先輩が通してくれた。

「あの、今日はもう閉店なんですよね、すみません、もっと早くくればよかったですね。」

「いいんですよ、今日は上書き、ですからね。」

そう言って奥のVIPルームに通された。

「その、上書き、って何ですか?」

部屋に入って見渡しながら、ずっと疑問に思っていた上書きについて聞くと、後ろからの衝撃でソファに倒れ込んでしまう。

「ひゃっ、え、ジェイド先輩…?」

ソファにうつ伏せた状態から振り返ると、そこにはにこっと笑みを浮かべたジェイド先輩が見下ろしていた。

「監督生さん、先日…フロイドに触れられたところを、僕が上書きさせて頂きますね。」

ゆっくりと近づいて来たかと思うと唇が重なる。海の中のようで息ができない。

「んんっ…ふ…ぁ…」

「苦しいでしょう、少し口を開いて…」

言われたように少し口を開くと、口内にジェイド先輩の長い舌が入ってきた。歯列をなぞられ、舌を絡めたり、上顎をツーっと撫でられると頭がぼーっとしてくる。

「はぁはぁ…」

長いキスが終わると息が上がって、何も考えられないままジェイド先輩を見ると、フロイド先輩と同じギザギザの歯を見せ、舌なめずりをしながらこちらを見ていた。
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