第1章 もっと。
モストロラウンジに行ってないのにあったということは、フロイド先輩がそう言って渡してくれたのかな…でもあのフロイド先輩がそんなこと言うだろうか。鏡へ続く道や鏡の間に落ちていたのならそう言うだろうし、昨日目が赤くなっていたことにも気がついて心配してくれた。これは、対価が何なのか、恐ろしくなって来たな…。
授業が終わると、エースには「ま、頑張れよ!」と言って肩を叩かれた。
待ち合わせの林檎の木の下へ向かうべく、身支度を整えて向かうと既に約束の人物はそこにいた。
「お待たせしました、ジェイド先輩…あの、今朝はテキストを届けてくださりありがとうございました。助かりました。」
お礼を伝えながらも、本当はどこにあったのか、先輩は昨日のこと、どこまで知っているのかが気になるし、私も罪悪感でいっぱいで上手く笑えない。
「いえいえ、授業の前にお渡しできてよかったです。」
ニコッと笑って、隣へ座るように促され座る。対価って何だろう…不安で胸が押しつぶされそうだ…。
「そんなに硬くならないでください。対価…の前に、貴方と話せたらと思ってお呼び立てしたんですよ。」
「話…?」
「昨日、食べていただいた新作のいちごのデザートの感想をお聞きしたいなと思いまして。お口に合いましたか?」
昨日食べるはずだったいちごのデザート。食べてはいないのに咄嗟に「はい、美味しかったです。」と告げると、ジェイド先輩は目を細め「本当は?」と言った。やっぱり、私が昨日モストロラウンジに行っていないこと、デザートを食べていないことはお見通しだったようだ。何も言えず、俯いてしまう。
「ではお手伝いを致しましょう。こちらを見て?」