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【APH】英国紳士との冬

第1章 手を繋ぐのは誰のためでしょう


「手を繋いでくれませんか」
やってしまった、別にこんなものを求めたかった訳ではないのに。いや、求めたくなかっただけだけれど。
応えてくれないのを知っていて、なにが楽しくてこんなことを言ってしまったのか自分でもわからない。
クリスマスが過ぎ、正月もあけたが依然としてイベントによって増えたカップルの数は減らない。その熱に浮かされたのか、冷え性には堪える寒さに、少しでも温もりを求めてしまったのか。まあ、どれでもないだろう。頭ではわかっているのだ。そう、わかっちゃいる、当たり前だろう。わたしはただ彼に触れてみたかった。簡潔で簡単、先が透けて見えるほどあけ透けなわたしの気持ち。
彼が好きだと気づいたのはいつだろうか。
もう覚えていない。気づけば目で追っていた。彼の細かな仕草を覚えてしまっていた。無意識に彼の匂いを、姿を探していた。
好きだと気付くのでさえ簡単ではなかったのだ、伝えるのなんて困難極まりないに決まっている。ずるずると時が過ぎ、そしてこのザマ。最低。
さて、ここまで考えるので僅か2秒。
彼の顔をそろそろ覗いて、冗談だと伝えるか待ってみるか決めねばならない。
しかし、流石イギリスさんである。彼もじっと私を見つめている。その先を待っている。わたし以外の女の子になら、きっと「レディに先を言わせる訳にはいかないだろ?」とかなんとかいうくせに。まあでも、やっぱり、わたしだから、仕方ない。
わたしから行動を起こさねばならないのだ。苦しくて悔しくて仕方ない。その眼差しが、張り詰めるこの空気が、わたしを追い詰めることなんて貴方が一番知っているでしょうに。
「やっぱり、なんでもないです。」
小さく深呼吸して言う。立ち止まる。ちょっと俯いて涙を拭う。この涙は、冷たい空気を思い切り吸い込んでしまって鼻や目にツンとしみたことにしよう。
嗚呼、しかし、緊張のしすぎて声が裏返ってしまったこと、数秒の間が空いてしまったこと、色んなことが重なって,これを冗談でしたでは済ませない雰囲気になっている。
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