• テキストサイズ

【イケメン戦国】永遠の始まり(プロローグ)

第7章 三日月の夜に。明けた朝に。


(莉乃 Side)


情けなくて、みっともなくて、涙が止まらない。



嗚咽が漏れないように布団で口を押さえるけれど、
心の底から溢れる自分への嫌悪感は止められなかった。



どうしようもなく、馬鹿だ、私。




自分らしく、強く生きていく。


そうやって転職を決めたはずなのに、ここでは自分ひとりじゃ何もできない。


寄りかかれる場所は一つもない。


どんなに主義を主張したところで、ここは自分の居場所じゃない。


戦国の世に通じる訳なんてない。




寂しい、帰りたい。





泣いて痛む目を抑えながら、少し障子を開けてみた。

三日月がこちらを見てる。

月は…500年前も変わらないんだな。






ふと思い立つ。

・・・・本能寺からここまで馬の距離だったのだから、何日か歩けば着くかも知れない。



夜が明ければ、城の皆が起き始める。

行くなら…今だ。




バッグの中から手帳を取り出し、吉野さんへの置き手紙を書く。

「お世話になりました。」


簡単にだが、吉野さんの笑顔のイラストを添えて。





信長様、そして武将たちに残す言葉は…

複雑すぎて、書けなかった。








バッグを抱え、廊下に出る。



誰も起きてきませんように。

誰にも会いませんように。



床を擦(す)るようにして進んでいく。
足音ですら、今は自分への警笛に聞こえてしまうから。












「何処へ行く」




背中から刺すような問いかけが聞こえた。



ビクリとして足が止まる。

振り返らなくても声の主が分かった、その主の静かな怒りも。




振り返れない。






「また、逃げるのか」





………また?




思わずカチンときて振り返ってしまった。



/ 47ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp