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夢過ぎる水溜りボンド

第3章 episode3


ある日サークル主催のライブを行うことが発表された。

その日以降サークルの空気が変わった。
大勢でなにか大きなことを成し遂げようとするとき
人は結束し、時には衝突もする。
ネタ練習にも一層の緊張感が漂っていた。

兄もバイトを減らし、暇さえあれば練習に励んでいた。

私の方へも練習を見てほしいとの依頼が増えていった。
その他にもコントで使う小道具の準備やライブの告知写真や動画の撮影など
頼まれることは、言われるがまま手伝った。

あっという間に準備期間は過ぎて行った。

そして教室での最終リハーサルも終わり、部長から皆にSTAFF用Tシャツが配られた。

私は部屋の隅で片づけをしていた。
サークルミーティングのときはいつもそうしていた。
チラリと視線を皆の方へ向けると
丁度兄がTシャツをもらっていて、とても嬉しそうだった。

よかったね!お兄ちゃん!

心の中でおめでとうを言っていると

「わらしー!」

と、突然部長に呼ばれた。

驚いて体が跳ね上がった。
そもそも部長とは一度もまともに話したことがない。
見学初日に兄と一緒に挨拶をしただけだ。

「そんなに驚かなくても! ちょっと来れるー?」

挙動不審な私の動きと部長の言葉は、皆の笑いを誘った。

恐る恐る皆の輪に近づく。
すると、部長から兄や皆と同じTシャツを渡された。

「今回のライブのために色々手伝ってくれてたんだってね?
俺、会場との調整とかが多くてあんまりこっちに顔出せてなかったから
トミーに言われて初めて知ったよ!今日までありがと!本番もよろしく!」

驚いた。
だってあの人は、部長と同じで見学初日に挨拶して以来
一度も話していなかったから。
もちろん私にネタを見てくれと頼んできたこともない。

でも…

見てくれていたんだ。。




この日、私は彼によって「見学者」から「仲間」になった。
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