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【YP】明日もきみは風になる。

第1章 春は出会いの季節です。




そう言って彼は優しい笑顔を浮かべながら私にペットボトルを手渡してくる。


「ほら、君も飲んで。ここまで走ってきたしカラカラでしょ?」


「え?!え、いや私は…そこまでしてもらうわけには」


「気にしないでよ、君のために買ってきちゃったから貰ってほしいんだけどな、俺。」


「あ………じゃあ、ありがとう…」


これ以上固辞するのも逆に申し訳ないと判断し、手渡されたペットボトルを受け取った。
体が水分を欲していたことが、一口飲んだあとにすぐ分かった。
すっきりとした清涼飲料水がじんわりと体中に染みわたっていく。


「おいしい…」


「あ、ほんと?良かったー。」


「ほんとにありがとうございます」


「別にいいって、そんなかしこまらなくて。俺達同い年みたいだし。」


「あ、やっぱり1年生なんだ?」


「うん。神奈川の箱根学園っていう学校なんだ。」


箱根学園、通称「箱学」。
先輩達の間でよく名前の挙がる高校だ。まだ勉強不足な上にうろ覚えだけど、確か去年のインターハイの優勝校ではなかったか。
いずれにせよ現時点で私が知っている名前の高校ということは、かなりの強豪校のはずだった。


「え、えーと……あなたも自転車部なの?箱根学園の」


そう声をかけると、彼はまた私に微笑みかける。


「うん、そうだよ。俺、真波山岳って言うんだ。よろしくね。」


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