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初恋リセット【ハイキュー!!】

第8章 緩み絡まり




及川は葛藤していた。

その理由はただひとつ。


扉の向こうから聞こえてくる声があまりにも可愛くて男心を擽られるからだ。

人に甘えることを滅多にしない彼女が、今こうして自分を頼ってくれている。
それだけで何かに勝ち誇ったような気分になってしまうのだから 俺も現金なやつだ、と及川は自嘲した。


「ほんと どうしてくれるのさ…」


考えて考えて、ようやく絞り出した声は花菜に対する降参の言葉。

やっぱり好きだと思い知らされる。


「あ、あの私 何か不味いこと言いましたか?」


「まさか。花菜は気にしないでそのままでいてよ」


花菜の表情は及川からは見えないが、僅かに不安がっていることは手に取るように分かった。

それすらも愛おしく感じてしまうのだ。
花菜が風邪なんて引いていなければ、今すぐこの扉を開けて襲ってしまいそうになる。


開けたくても開けないこの扉は、及川の理性を保つには有難い存在であった。


そういえば、と及川は口を開く。

ずっとタイミングを測っていた。及川は花菜に尋ねたいことがあったのだ。


「この間の東京遠征で、幼馴染くんと再会したらしいね」


「…! なんでそれを?」


「たまたま飛雄に聞いたんだ。…どうだった?彼は」


影山から話を聞いた時からずっと気になっていたこと。

花菜は少し間を開けてから、嬉しそうな音色で言った。


「久々に話せたので楽しかったです。彼も、会わないうちになんだかかっこよくなってました」


"かっこよくなっていた"


その言葉にそれ以上の意味があるのかまでは分からない。

ただ、それを聞いた及川の内心は、到底穏やかなものではない。


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