第9章 婀娜な紅葉に移り香を~ノーマルート(共通)
「だいぶ、寸法が大きいようだが……」
(〇〇に限ってそんな失敗はないと思うが……)
何か理由があるのだろうと〇〇の方を見遣ると、〇〇は何やら落ち着かない様子で、座ったまま肩を竦め、もぞもぞと身体を揺らしている。
その何とも愛らしい姿に答えを急かさず待っていると、徐に俺の真正面へとにじり寄って来て…
「……えっと……失礼、します…」
胡坐をかいた俺の足の間に、自ら収まった。
(おや、珍しい…)
慣れない振舞いをして、ぎこちなく俺に背を預けた〇〇に、されるがままに身を任せていると、〇〇は羽織を引き寄せて自分の前で合わせるようにした。
すると、ふたりがすっぽりと包まれる形になる。
「……こうすれば、ふたりであったかいでしょう?」
そこで漸く、寸法違いの大きさはふたりで包まるためのものだったのかと納得した。
「光秀さんのお誕生日に羽織をプレゼントしようと思ったんですけど……普通の羽織じゃあ光秀さんが持っていないもの、にはならないなって思って──」
そこで〇〇がこの大きな羽織を思いついたのは、先日行われた相撲大会で優勝し、家臣に取り立てられたあの大男が関係していると言う。
「その方に信長様にご挨拶に行く時に着る一張羅を仕立てて欲しいって依頼を受けたんです。それで体の大きな方だったから出来上がった羽織が二人分くらいあって。それで思いついたんですけど……どうですか?」
そう問われ、素直に礼を言えばいいものの、それだけでは物足りないのが俺の困った性で…