第6章 想ひ想はれ常しへに、夏。
「みんなとお揃いの浴衣を着せてもらって、一緒に踊って……アットホームな雰囲気ですごく素敵な町ですね」
「あっとほおむ?」
「あっ…ええっと……みんな家族みたな感じで、居心地が良かったって意味です」
「……家族、か…」
「はい」
「ならば、報告しなければな」
「…え?」
「この町の者たちが家族だというならば、いずれ俺の伴侶となるお前のことを報告するのが筋というものだろう?」
「で、でも!いきなりそんなこと言ったらみんなびっくりするんじゃ…」
「今宵は丁度、皆一堂に会した良い機会だ。今ここで報告も兼ねて、声高らかに、皆の前でお前への愛を誓おう」
「えぇっ!?」
動揺する私を他所(よそ)に、光秀さんは櫓から見下ろす景色を見渡してから、大きく息を吸った。
お祭りどころじゃない騒ぎが起こる予感に、その第一声を発するかしないかの瀬戸際──
「ぁ…ダメ!」
「…っ」
光秀さんの口を塞いだ。
私の唇で。
それはただ触れるだけの、子どもじみたものだったけれど…
唇を離し、目一杯浮かせたかかとをゆっくり下ろして見上げた光秀さんは、私を見つめたまま長い睫毛を揺らし何度か瞬きをするから、私も同じ顔になる。
光秀さんの珍しい表情に呆気にとられてできた少しの沈黙のあと、私は慌てて言い訳を口にした。
「みんなにバレちゃったら……光秀さんと、デート、出来なくなっちゃうじゃないですか…」
言いながら恥ずかしくなって、咄嗟に目を背ける。
──けれど、続く沈黙が気になって、もう一度そろりと光秀さんを見つめ返した。
その瞬間、胸の奥がキュッと疼く。
いつも涼し気な光秀さんの目許が、僅かに紅く染まっている気がして…
(……もしかして……光秀さん、てれ──)
──ドォン──
思い浮かんだ言葉を遮るように、大きな爆発音とともに、辺りが一瞬昼間のようにパッと明るくなった。
「…あ、花火……。そうだ、九兵衛さんに教えてもらったんです、行きましょう!」
今度は私が光秀さんの手を引いて櫓を降りていく。
花火は神社の境内が一番よく見えるからと、さっき九兵衛さんが教えてくれていた。