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【ハイキュー!!】透明な春

第1章 序章




入学式からはや一ヶ月が経過し
クラスにも"定番の型"が定着しかけた時期

その中でただ一人、クラスから取り残された生徒がいた


孤爪研磨――…


特に誰と親しくなる訳でもなく、いつも一人で教室の隅の席に静かに俯いて座っている

他のクラスメイトが話しかければ、目を泳がせて小さく返す


そんな彼の第一印象は、ただ、
よく分からない人――…だった



しかしそれが一変する出来事が、唐突に訪れる



「さん!今日お昼は?持って来た?」
「良かったら一緒に食堂行かない?」

クラスメイトとは別で、去年友達になった可愛らしい二人が
わざわざ教室まで誘いに来てくれた

その優しさが嬉しくて、頷きたくなるのを我慢して

『ごめん!今日はお弁当で…』

カバンに詰めたお弁当箱を
申し訳なさそうに指す

『明日良かったら一緒に食べない?』
「うん、分かった!じゃあまた!」
「急に誘ってごめんね」


『全然!嬉しかった』と素直な気持ちを伝えれば、ほんのり頬を緩めて去っていく


見えなくなるまで手を振っていると、また別の子から「一緒にお弁当食べよう」と誘われる

暖かい人ばかりに支えられて、毎日、毎時間が彩りに溢れている



楽しいお昼の時間に終わりが近づき、共に食事をした友達とも別れる
食後特有のウトウトを飛ばす為、ココアを買いに体育館裏にある自販機へ一人で向かう



自販機の前に立ち、あくびをしながらボタンを押す

ガコン、と落ちてきた飲み物を取り出してみると、それには温もりが無く
『?』と目を開き確認すれば
手に持っていたのはりんごジュースだった

『あ……』

造作もないミスに落ち込んでいたその時に、突然背後から声が掛けられる


「ココア……要る…?」


びくりと反応して振り向けば、見覚えのある黒髪が、遠慮がちに佇んでいた

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