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黄金の草原

第9章 大方は真しくあひしらひて、偏に信ぜず、また疑い嘲るべからず



公任と銀邇は下り坂の林道を進んで、麓の村へ到着した。

村は灘らかな盆地に作られ、こぢんまりとしていた。
瑞雲が言っていたような、攻撃的な村人の気配も感じない。

公任と銀邇は陽露華の家の一件で、各々の中の固定観念や価値観が覆り、精神を振り回された後だった為、いつもなら瑞雲のような善人は割と信用する傾向にあった2人が、すっかり疑心暗鬼してしまっている。

調子を狂わされ、今の自分たちの判断が最適解だったのかさえ分からない。

公任は自分の頬を両手で叩いた。
変な思考は一旦止めだ。今はとにかく情報を集めよう。


「よし、行くぞ!」


いやに気合が入った公任を見て、銀邇は顔を歪ませた。


「お前は何と戦うつもりだ?」
「俺たちの脅威になるであろう未来!」
「格好つけて言っても、誰も聞いちゃいねえよ」
「ひっどーい」


銀邇はさっさと公任を追い抜いて、村へと歩みを進める。

2人が見つけた第1村人は、畑で雑草を抜く初老の男性。
公任が声をかけると、男性は一度こちらを向いたがすぐに仕事へ戻ってしまった。
公任は諦めずにもう一度声をかけると、男性は明らかに嫌悪感を隠し切れていない顔で睨みつけてきた。


「すみませーん! 旅の者です! 少しお尋ねしたいことがありますので、そちらに伺ってもよろしいでしょうか?」


公任がそう言うや否や、男性は怒鳴り散らした。


「うっせえよ! 旅だかなんだか知らねえが! おめえらに話すことなんざなんもねえ! さっさと失せろ!」


公任はすぐに謝って、銀邇とその場を去った。


「なんなんだよ、あのじじい」
「警戒してるというより、嫌ってるな」
「だよね」


公任と銀邇は名状し難い気持ちで村を進んでいくと、今度は井戸で水汲みをしながら、井戸端会議を楽しむ数人の女性を見つけた。


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