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黄金の草原

第8章 遥かなる苔の細道をふみわけて、心ぼそく住み成したる庵あり



朝焼け雲が木枠の外の木々の隙間から見える。
陽露華は囲炉裏に当たりながら、ぼんやりと見上げた。足を抱える手に力を入れる。

結局、満足に寝れなかった。

深夜に、別荘が建つ斜面と反対側の麓で空き小屋を見つけた3人は、一旦そこで休息を摂る事にした。

この小屋を見つける前に陽露華は公任から、母・綺緋の暗殺成功と祖父・又兵衛の急死を知らされた。

綺緋の暗殺は松永が仕込んだ毒による毒殺。体内から微量の毒素は検出されるかもしれないが、現在の技術では難しいかもしれない。

又兵衛の死は想定外だった。竹井が偶然又兵衛の部屋を通りかかった時、開いていた扉から見えたらしい。大量の血を吐いて倒れている又兵衛を。
竹井は任務完遂の為に現場には触れず、誰にも知らせなかった。

陽露華は水で濡らした木の枝で炭を突く。割れて火花が散った。


「あれ……陽露華ちゃん?」


公任が囲炉裏の向こう側で目を覚ます。


「おはよぉ……」
「……おはようございます」


公任は上半身を起こして伸びをした。公任の着物が着崩れて、女性が見たら卒倒しそうな腹筋と胸筋が見えてしまっている。

陽露華は膝に顔を埋めた。
寝起きの公任は心臓に悪い。
欠伸で出た涙、目を擦る手、汗で濡れた首筋に張り付く髪……。
その全てが妖しく艶やかで、陽露華は見るに耐えなかった。


「陽露華ちゃん、寝れた?」


公任は陽露華の向かい側に座る。
陽露華は顔を伏せたまま頷いた。すると公任はくすくすと笑った。


「嘘は良くないなあ。君は自分の事を隠そうとするね。……そんなに俺が信用ならない?」
「……っ!」


公任の声色が変わった。いつもの緩やかな調子の声に、寂しさや悲しさが滲んでいる。

陽露華は恐る恐る顔を上げて、公任を見ようとしたが自分の髪でよく見えない。


「ぅんん……」


銀邇が呻きながら寝返りをうって、柱に頭をぶつけた。


「……った」
「銀ちゃん何してんの」
「…っ…か、た……っら、やめっ……」
「あー、いつものか」


呻く銀邇に公任は膝を引き摺って寄り、銀邇の肩を揺らす。



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