• テキストサイズ

黄金の草原

第7章 いま一度めぐりあわせて賜び給へ




「な、何してんだ……?」


暁夫が火がついた提灯を持って裏庭に戻ると、陽露華が広げた巻物の前で正座して合掌している。


「なあおい……」
「離れてっ!!」


陽露華は叫ぶと同時に両手を夜空に掲げた。

しかし何も起こらない。


「本当に何してんだ?」
「失敗……? いやそんなはずは!」


陽露華がもう1度手を合わせた瞬間、


ドーンッドドーンッ


空に炎の大輪が花開き、辺りを明るく照らした。低い破裂音が腹の下で響く。


「花火?」
「成功!!」


陽露華は飛び跳ねて喜んでいる。
暁夫は空と陽露華を交互に見た。


「はっ! まさか!?」
「よしもう1回!」


陽露華は暁夫を完全に無視して、もう1度手を合わせる。

暁夫は目の前で起こる出来事に理解が追いつかない。

陽露華は2発目を打ち上げた。


ドーンッパラララララ……


今度は緑色の大小様々な花が無作為に開く。

館の1室から小さく歓声が聞こえた。
館内にいる人々は気付かないだろう。こんな至近距離で花火を打ち上げているとは。


「これで公任さんが気付いて来てくれたら……」


陽露華がまた手を合わせると、館の屋根から人影が飛び降りて、暁夫に纏わり付いた。


「うあっ!」
「暁夫様!!」


赤い2本の線が入った狐面を付けた人間は、暁夫を羽交い締めにして首元に短刀を突きつける。

陽露華が手を動かそうとしたら、首の後ろに冷たい何かが当てられた。


「動かない方が身の為ですよ、陽露華様」


館の屋根から舞うように降り立った梅花は、陽露華に近付く。
陽露華に短刀を当てているのは、赤い1本の線が入った狐面を付けた人間。

陽露華は梅花の手にあるものに見覚えがあった。


「それ、銀邇さんの……!」
「ご名答です」


梅花は銀邇の刀を地に鞘ごと刺し、陽露華の手の中で弾ける火花を忌々しそうに見た。


「少々計算間違いをしてしまったようです。まさか暁夫様も加担されているとは」
「加担……? お前は何の事を言ってるんだ? 陽露華、さっきの花火はなんだ?!」


暁夫は目の前で起こっていることにまだ理解が追いついていなかった。軽い錯乱状態になっている。




/ 116ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp