第2章 本丸
審神者様の第一印象は『若い』の一言に集約される。
たぶん、私より少し年上くらいの年齢だろう。
それでも、ピシリと着こなされた着物、袴やしっかりとした言葉遣いから威厳を感じた。
今までに会った誰よりも怖く冷たい人だと思った。
でも…
万屋での受け渡しの際はとても高圧的な態度だったのに本丸についたとたんに、年相応の表情、砕けた言葉遣いに変わった。
先にも言ったように、この本丸に来るにあたって私は元の名を奪われ、新たに名を与えられた。
奪ったのも名付けたのも審神者様だ。
何かの術によって記憶から消された私の名は、もうどんなだったか思い出せない。
それについては「ごめんね。決まりなんだ」と審神者様が悲しげな表情をしていたのが今も頭の隅に残っている。