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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第6章 【寂しがりや】



「これ家系図だよね?でもシリウスの名前が載ってないよ?」

 壁に貼られたタペストリーを見ながら、ハリーが言った。金の刺繍で飾られた家系図は、約200年前まで遡ることができる。
 以前サンクチュアリの屋敷で見たグレイン家の家系図ほどではなかったが、ブラック家もかなり近親婚を繰り返している事が分かった。
 所々クリスも聞いた事のある純潔一家の名前を見付けたが、ハリーの言う通りシリウスの名前はどこにも見当たらなかった。

「以前はここに在った。だが私が家出した後、お優しい我が母上が焼き消して下さった」

 タペストリーにある焼け焦げた後を指さしながら、シリウスが自嘲する様に鼻で笑った。しかし他の誰もが笑うことが出来ず、そんな中ハリーが遠慮がちに訊ねた。

「家出って……どうして?」
「生まれた時から家に馴染めなくってね。16歳の時、我慢の限界がきて家出したんだ。ハリー、君のお父さんの家に厄介になってね。有難いことに、ご両親は私の事をジェームズ同様息子として歓迎してくれた。17歳になると、叔父のアルファードが私にかなりの金貨を残してくれていて、独り暮らしを始めたんだ。アルファードも、それが理由でこの家系図から抹消されている」

 シリウスはタペストリーを見ながら、淡々と話した。寂しさとも憎しみとも違う、ただありのままの現実。告げられた真実に誰ひとり口を開くことが出来ず、黙って話しを聞いていた。

「フィニアス・ナイジェラス、曽々祖父でホグワーツの校長の中で1番信頼のなかった人物だ。アラミンタ・メリフルア、母の従妹でマグル狩りを合法化する魔法省令を強行可決しようとした。伯母のエメラーダは、屋敷しもべが役に立たなくなったら首を刎ねるという我が家の伝統を打ち立てた。そして弟のレギュラス、馬鹿な事に『死喰い人』に加わり殺された」
「えっ!?嘘でしょう、まさか『死喰い人』に加わってたなんて」
「紛れもない事実だ。我が家の様子を見れば分かると思うが、先祖代々狂信的な純血主義者でね。ヴォルデモートの主張が正しいと思っていて、弟が『死喰い人』に加わった事を心の底で誇りに思っていたみたいだ。半面、私はいつも厄介者扱いされていた」
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