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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第14章 【それぞれの思い】


 ムッとむせ返るるような暑さとお香の匂いさえ我慢すれば、薄暗い上に退屈な『占い学』の授業は眠るのにはもってこいだった。
 オマケに授業の内容はやってもやらなくても同じなんて、正にサボれと言わんばかりだ。相変わらず悪夢の所為で睡眠不足のクリスは、ここぞとばかりに惰眠を貪った。

「クリス、授業が終わったよ、ねえクリスってば」

 誰かに身体を揺さぶられて、クリスはやっと目を覚ました。ググっと腕を伸ばし、うずくまって寝ていた所為で固まった身体をほぐす。まだ覚醒しきれていない頭で、クリスはハリーとロンを見た。

「……何か宿題は出たか?」
「安心して、変わらず夢日記だけ」
「それは良い事だ」

 ふぁ~っと欠伸しながら『占い学』の教室を出て、長い螺旋階段を下りていく。次の授業は『変身術』だったはずだ。
 マクゴナガル先生相手では寝る事も出来ないし、かと言って真面目に授業に取り組んだところで、皆と同じように魔法が使えるわけでもない。クリスがついため息を吐くと、何故かロンも同じようにため息を吐いた。

「どうしたんだ、ロン?」
「変身術の授業が憂鬱でさ。昨日は遅くまで――」

 言いかけて、ロンは慌てて言葉を切った。不思議に思ったが、丁度ハーマイオニーが後ろから追いかけてきたので、そこで会話は終わってしまった。

 『変身術』では、引き続き「消失呪文」の反復授業が行われた。クリスだけは特別に、1年生の頃にやったマッチ棒を針に変えると言う簡単な術をやらされたが、針どころかマッチ棒を尖らせることすら出来なかった。

 やっとその日の授業が終わり、沢山出された宿題と、この後待ち受けるアンブリッジの罰則の事を思うと一気に気分が暗くなった。ため息交じりに夕食を取っていると、ハーマイオニーが気づかわしげに話しかけて来た。

「今はまだ我慢の時よ、いきなり魔力が戻るわけじゃないわ」
「そうだな……」
「ハリー!!」

 突然、後ろからハリーを呼ぶ刺々しい声がした。振り返ると新しくクディッチのキャプテンに選ばれたアンジェリーナ・ジョンソンが仁王立ちしていた。
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