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ナルシサス。【煉獄杏寿郎】

第4章 肆ノ型. 共同護衛 ~不死川実弥・伊黒小芭内の場合~







「醜いだろう。あまり他人に見せたいものじゃないんだ。」





刹那の無言を嫌悪だと捉えた伊黒は、視線を逸らし淡々と言った。






「俺の一族は変わっていてな、鬼に生贄を捧げる代わりに金品を貰ってた。」



『鬼と取引をしていたと...』




「そうだ。そして俺は珍しい色の目をしていたが為に鬼に気に入られ、生贄として育てられた。その鬼は蛇のような奴で、俺を自分と似せようとこの口を切り裂いたんだ。この傷はその時の名残。どれだけ年月が経とうと、胸糞悪い一族の生き残りなんだ俺は。」





黙ったままの刹那に伊黒はため息をつく。





(なぜ俺はこんな話をこの女にしてるんだ。)





伊黒は簡単に人を信用しない。

ましてや相手が鬼ともなれば尚のことだ。
そんな伊黒がなぜ刹那に対してはここまで身の上話をさらけ出してしまうのか、当の本人もわかっていなかった。


ただ何となく、刹那の纏う空気や視線に考えるよりも口が動いてしまう。






『伊黒様』




あれこれ考え込んでいれば、いつの間に動いたのか目の前にある刹那の顔。
伊黒が驚く暇もなく、刹那は伊黒の傷跡を包むように抱きしめた。




「な、にを」



されるがまま抱きしめられている伊黒の問いに、刹那は更に抱きしめる力を強くする。





『失礼をお許しくださいまし。伊黒様、貴方の一族の業を貴方だけが背負う必要は無いのですよ。貴方は一族が犠牲にした人々の分まで強く生き、多くの人々を救って来たのでしょう。誇ってくださいませ。』





頭上から降ってくる言葉に伊黒は戸惑う。
今まで自分を蔑んだり、汚い物として扱う言葉は嫌になるほど聞いてきた。

どれだけ鬼を斬り人を救おうと、口元の傷を見た瞬間相手は態度を変える。


《バケモノ》
そう言われた事も少なくない。



だからこそこの傷を見て尚、伊黒を認める言葉を言ってくれたのは刹那が珍しかった。





『傷があろうとなかろうと、伊黒様は伊黒様なのですから。過去貴方様の一族がどんなに罪深い事をしたとしても鬼殺隊柱である貴方は、誰がなんと言おうと尊いものなのです。』






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