第4章 肆ノ型. 共同護衛 ~不死川実弥・伊黒小芭内の場合~
刹那は少し焦っていた。
焦っていたと言うよりも、今現在萎えていると言った方が的確かも知れない。
一刻前、今日の任務である鬼に狙われた貴族の娘の護衛に就いたまでは良かったのだが
如何せん今日の共同任務の相手が悪い。
と言うのも、どう考えても刹那を嫌っていると思われる2人と一緒だからだ。
「おい女、俺の方に寄るんじゃないぞ。俺はまだお前を信用していないからな。」
そう言って刹那に怪訝な目を向けるのは蛇柱たる伊黒 小芭内。
二手に分かれて護衛に就いているのでここには居ないが、もう1人は風柱の不死川 実弥だ。
不死川は煉獄と共に居るのだが、先程から殺気が此方まで届いてくる。
特に何をした訳でも無いが、柱の中でこの2人が最も自分を嫌っている事を知っている刹那は先程からため息が止まらない。
娘の部屋の外の岩陰に2人で座り鬼が来るのをじっと待つ。
勿論無言。
(これは、気まずい。)
刹那は沈黙に耐えきれず伊黒に悟られぬようちらりと横目で顔を伺った。
乱雑に切られた髪。
その間から覗く瞳は瞳は片目ずつ色が違う。
そうして口元の布を捉えた所で刹那は、あ、と声を漏らす。
「何だ、鬼の気配でもしたのか?」
『いえ、伊黒様のお口元、何か怪我でもされたのですか?』