第3章 参ノ型. 初任務 ~煉獄杏寿郎の場合~
次の日から案の定2人は任務へと駆り出された。
「南南東へムカエ!ソノマチデハ毎夜毎夜子供ガキエル!!!」
鴉の伝令と共に鬼の元へと向かう。
目的地へと向かいながら、煉獄は刹那をチラリと盗み見た。
相当なスピードで走っているというのに汗一つかかずに、涼しい顔でついてくる。
息も乱さず、周りの風景を見る余裕すらあるようだった。
(よもや、恐ろしい体力だな!)
煉獄の視線は刹那の持つ日輪刀へと移る。
刹那の日輪刀は隊士には珍しい大太刀だ。
通常の刀より遥かに大きく重く、刹那のように華奢な体では持つ事も困難だろうという刀。
そんな刀を抱え走り、時には鬼の首にその刃を届かせるのかと考えると煉獄は素直に感心してしまう。
(相当厳しい鍛錬をしていたのだろうな...)
まじまじと刹那の顔を見ていると、ふとかち合う目と目。
『煉獄様?どうかされましたか?』
「む?いや!暁天少女の日輪刀が大太刀で珍しくてな!!」
『確かに柱の皆様にも、太刀を持つ方はいらっしゃいませんでしたね...』
自分の脇にさした日輪刀を撫でながら刹那が言う。
その瞬間の表情が優しい母のようで、
「暁天少女!刀を見つめる時の君の表情は随分優しいな!!大切な物なのか?」
ハッハッハと豪快に笑いながら言う煉獄に、キョトンとしていた刹那だが
ふっと悲しく笑う。
『.....とてもとても大切な、父の、形見でございます』
初めて見る今にも消え入りそうな表情に煉獄は戸惑う。
踏み入ってはならない所に踏み入った、
そんな気がしてならない煉獄は刹那から目をそらす。
「よもや、それは...『煉獄様着いたようですよ』む?!」
俯いた煉獄の謝罪を遮り、刹那は前方を指さした。
『あれが鬼の根城のようです。』
刹那の視線の先には、崖の下に見える小屋。
周りには食い散らかされた子供の死体。
間違いようもない、
あそこが今回の仕事場だ。