第13章 拾参ノ型. 杏の心痛
「刹那さん!」
「刹那さ〜ん」
「刹那!!」
煉獄が刹那と恋仲になって数日。
煉獄は刹那の人気を痛感する日々を送っている。
と言うのも、自宅療養になり自邸に居ることが増えてから毎日と言っていい程刹那目当ての客を目にするようになった。
それは鬼殺隊の後輩隊士や同じ柱の者達だったり、近所の住人だったり。
とにかく年齢問わず老若男女様々な層が何かしら理由を取り付けて刹那に会いに来る。
まあ、内容としてはまた店に買い物に来てくれだとか、進められた茶屋が良かったとか、この前命を救われた等、たわい無いものなのだが、
[今度お茶でも。]
[今日も別嬪さんだな〜。]
[うちの息子なんかどうだ。]
時たま聞こえる下心を含んだ声に、煉獄は気が気では無い。
今日だってそうだ。
炭治郎達3人がやってきて、煉獄と共に鍛錬をこなしている最中、
任務帰りの刹那の姿が見えた瞬間皆飛ぶように刹那へと駆け寄ってしまった。
あまりにも親しげに刹那と話すので、煉獄はすっかり蚊帳の外。
[人たらし]
刹那を一言で表すとすればこの言葉が良く似合う。
刹那が意図して誑かしている訳ではなく、刹那と一度でも関わってしまえば大抵の人間は刹那に懐いてしまう。