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バトルをする君が好き

第1章 はじまり


ガラル地方の最強のチャンピオン。彼の名を知らぬ者は、このガラル地方において誰一人としていない。今日も小さな子供から大人まで、かじりつくようにテレビを見ている。そして、その盛り上がりはとうとう最高潮を迎えた。最強のチャンピオン…ダンデの不敗記録を更新するという形で。

「見たか!? アニキカッコよかったよな!!」

それは、人々の声よりもウールーたちの鳴き声の方が響きわたるハロンタウンも例外ではなかった。まだ興奮が冷めないようで、遠くから聞こえた足音がそのまま勢いよく家の中へと入ってくる。

「ホップ!!」

先程テレビの中で輝いていた紫色の髪が、より小さい身丈で現れた。その姿を見ると、少女は肩にかかる髪を揺らしながら、現れた紫の髪の…ホップの名を呼んだ。

「うわっ!?」

少女がホップに勢いよく抱きつくと、部屋にはひとつのため息が零れる。

「いい加減、それ止めろよ。ホップが困ってるだろ」

呆れたように座っていたソファから立ち上がるのは1人の少年。少年は帽子を被り、用意していたリュックを背負う。少女はハッとし、そして眉を下げてホップを見た。

「……ごめんねホップ…迷惑だった?」
「大丈夫だぞ!! だけど、急に走り出すと危ないからな」

そして、ホップは少年と少女に一言ずつ声をかけると、家の外へと出た。扉の向こう側に消えていく彼の後ろ姿を見て、少年は鼻を鳴らした。

「意識すらされてないじゃん。もう諦めたら? 姉貴」
「…うるさい。あんたは名前すら認知されてないくせに」

ギロりと少年を睨む少女は、先程の眉を下げた人物とは思えないほどの豹変ぶりだ。少女の言葉は癇に障ったようで、少年は睨みつけながら少女の前に立つ。

「は? 何知った口聞いてんだよ。お前の本性、ホップにバラしてやろうか。ぶりっ子女」
「はっ!! 根暗のあんたの言うことなんて誰が信じるものですか。いい加減、テレビの録画をチャンピオンで埋めるの止めたら?ストーカー野郎」

少年と少女は睨み合い、互いの拳に力が入る。

「…あんたたち、くれぐれもポケモンを喧嘩に使わないこと。約束して頂戴」

そんな彼らの様子を見ていた母親が、頭を抱える。少年と少女は双子の姉弟だ。だが、歳が近すぎるせいなのか…二人は毎日のようにいがみ合っていた。
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