第7章 倉持洋一の場合
夏休みも明けて、どの部活も3年生が引退し、野球部は御幸がキャプテン、俺が副キャプテン、女子バスケは真琴がキャプテンになった。
「倉持~!」
「なんだよ、鈴村。」
俺に声を掛けてきたのは隣の席の鈴村悠稀。
真琴と同じバスケ部の副キャプテン。
同じ副キャプテンだし、共通の話題は真琴のことで話すようになった。
「ねぇ、ねぇ、知ってる?」
「何が?」
「真琴、また告られたよ~」
「ふーん。」
「昨日は3年生、今日は1年生だって!」
「へぇ~。」
「へぇ~って気にならないの?」
「はぁ?なんでだよ。それにどーせ断ってんだろ?真琴のくせに!ヒャハ♪」
「まぁ…断ったことは断ってるんだけどーー」
「だけど?」
後ろから声がして振り向くとーーー
「御幸かよ。」
「何ー?御幸も気になるの?」
「ん~まぁね。」
そりゃ、そうだ。コイツは1年の時から真琴狙いだからな。
「真琴ね、今まではただごめんなさいって感じで断ってたから告った男子も諦めないヤツ多かったんだけど~最近はね!」
「なんだよ、さっさと言えよ!」
「好きな人がいるから…って断ってるみたいなの!」
「へぇ。。。」
へっ?!あいつに好きなヤツ?!
今までそんなの聞いたこともねぇし、そんな素振りも見たことねぇし。。。
俺は至って興味ないように振る舞ったつもりだけど、鈴村がニヤリと意味深に笑ったのは気が付かなかった。
「悠稀ー?」
聞き慣れた声。
「何ー、真琴?」
「担任に呼ばれたから、部活ちょっと遅れるから先にアップしといてー!」
「オッケー♪任せて!」
「真琴、担任に呼び出しって何やらかしたんだよ?」
「もう!洋一と一緒にしないでよね!」
「ヒャハハ♪さて、俺は部活行くかな~」
そう言って教室を出た。
「いいなぁ~私も早く部活行きたーい!」
後を追って隣を歩く真琴をチラっと見る。
最近なんだか女らしく…なった?
気がするのは、好きな奴がいるからなのか?
それって…誰なんだ?
真琴が好きな奴…野球部の中にいんのかな?
「…ってば!聞いてる?」
真琴が俺の顔を覗きこんでいた。