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千分の一話噺

第11章 噂の雑貨屋さん


女はとある雑貨屋に立ち寄った。
『あの店に入ったら出てこられない』
そこはネットで噂の“神隠しの店”だった。

女は恐る恐る店に入った。
「いらっしゃい」
店主らしき老人が奥で挨拶をした。
たしかに妖しい雰囲気の店だが、売られている物は極普通の雑貨ばかり。
何人かの客も出入りしている。

女はちょっと拍子抜けしていた。
(なんだ、只の雑貨屋さんじゃない
やっぱり都市伝説なんだわ)
店内を見て回っていると紫色に輝く石が目に留まった。
(宝石?)

まるでその妖しい輝きに導かれるように、女はその石を手に取った。
「ほう、それに目を付けるとは…
御主、心に闇を持っておるな」
店の奥から店主の声がした。
女は辺りを見回したが、そこから店主の姿は見えなかった。
「えっ…隠しカメラ?」
「ほっほっほっ、この店にはカメラなんてない…
気配で分かるんじゃよ」
(そんなこと…)
女は背筋が寒くなった。
店を出ようと思ったが足が動かない。
(えっ?なんで?)
「残念じゃが、邪念を持つ者がその石を触ったら動く事は出来んよ
その石に魅入られたようじゃな」
女には店主の声が直接頭に響いているように聞こえた。
(た、助けて…)
恐怖で声も出せなくなっていた。
「無駄じゃよ…
その石は“神檻の石”と云われ、魅入られた者は何処(いずこ)に捕われる
諦めるんじゃな…」


数日後、馴染みの警察官がこの店を訪れ店主に写真を見せた。
「じいさん、数日前にこの女がここに来なかったか?」
「…さて、どうじゃったか?
何せ、年寄りなもんでな…
ところでそのべっぴんさんが何か?」
「こんな美人だが殺人犯だ
見掛けたら警察に連絡してくれよ」

ここは“神隠しの店”。
また一人、石に捕われて行った。


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