• テキストサイズ

H・I・M・E ーactressー【気象系BL】

第3章 scene1:屋上


また次の現場で…と、監督さんやカメラマンさんと握手を交わし、その場にいたスタッフさんからご褒美のスイーツを受け取る。

大抵の場合は花束なんかが用意されてるんだけど、僕はせっかく貰っても枯らしちゃうからと、花束を受け取ることを断わっている。

その代わりに用意されてるのが、僕の大好きなスイーツってわけ♪

ギャラはね、沢山貰えれば当然嬉しいけど、僕はスイーツが貰えるのも凄く楽しみなんだ。

「ふふ、今日は何だろうな♪」

小さな箱を両手で抱え、階段を降りる僕に、先を行く長瀬さんが振り向き様に鋭い目を光らせる。

「んな甘いモンばっか食ってると、そのうちぽっちゃり系にしか出らんなくなるぞ?」

うっ…、それはちょっと困るかも…

って言うか、そんな毎日スイーツばっか食べてるわけじゃないもん。

撮影の時だけ…
頑張った自分へのご褒美として、大好きなスイーツを楽しむのが、僕の至福の時間でもあるんだから…

「あ、次の撮影っていつ? また連絡くれるんでしょ?」

自分の荷物を纏めながら、クリアボックスを軽々持ち上げる長瀬さんに聞く。

撮影のスケジュールが分からないとバイトのシフト組めないからさ…

「今のところ再来週になると思うが…」

「分かった、空けとく」



全ての荷物をワゴン車に積み終え、僕は来る時同様、真ん中のシートを陣取る。

車が走り出すと同時に襲って来る睡魔に負けそうになるけど、のんびり寝てる暇はない。

僕は狭い車内でメイクを落とし、リュックの中で丸まっていた服に着替えを済ませた。

僕が“HIME”から“僕”に戻る瞬間だ。

「はあ…、疲れた…」

素の自分に戻った途端に湧き上がって来る疲労に、僕はシートの上で身体を伸ばした。

「少し寝るね? 着いたら起こ…し…て…」

ね…、まで言いきれずに、僕は呆気ない程簡単に睡魔に白旗を上げた。
/ 753ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp