第16章 日常7:眠れない僕と寝相の悪い彼
でもね、いくらイケナイ想像してみたところで、痛いことには変わりなくて…
「ちょっと我慢しろよ?」
「うぅ…、早くぅ…」
ああもぉ…、なんでそんなに不器用なの?
このままじゃ、僕の息子くん、再起不能になっちゃうじゃん…
櫻井くんの手先の不器用さを恨めしく思いながら、僕は唇をキュッと噛み締めた。
そうして暫く痛みを堪えていると…
「よし、外れた!」
櫻井くんの声が個室に響いて、ジッとチャックが引き上げられた。
「もう痛くないでしょ?」
「うん…」
僕が頷くと、別に運動したわけでもないのに、額の汗を拭いながら立ち上がり、櫻井くんが眉毛を思いっきり下げて笑う。
「あ、あの…、ありが…と…」
「まあアレだよな、“あるある”ってヤツだよな(笑)」
確かにそうなんだけどさ…
ホント…、櫻井くんがいなかったら、僕どうなってたことか…
「あ、ところでアイツは? どうなったの?」
痛いのが無くなったら、急にニキビくんのことを思い出した。
「アイツなら、店長がしっかり話しつけたから、もう店には来ないよ」
「そう…なの?」
「あと、今度大野くんの周りうろつくような事があったら、迷わず警察突き出すって言ってあるから、もう安心して良いと思う。証拠もあるしね?」
「証拠…って…?」
首を傾げる僕の前で、櫻井くんの顔がボッと赤くなる。
あ、もしかして…
「一応さ、店内監視カメラの映像もあるし…、証拠にはなるでしょ?」
そうだよね…
店内の至る所に防犯用の監視カメラは設置されてるし、特にAVコーナーは死角になりがちだから、他のコーナーに比べると台数も倍だ。
だから当然、僕がニキビくんに息子くんをモミモミされてるのが、しっかり映ってる筈。
でもなぁ…
お仕事…ってゆーか、“HIME”の時ならそれ程でもないけど、“智”の時はやっぱり恥ずかしいよ…
だってさ、自分がとんな顔してんのか分かんないんだもん。
ひょっとしたら、すっごい気持ち良さそうな顔しちゃってるかも(いや、絶対してる!)じゃん?
それはさすがに…ちょっとね?