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BERKUT【PSYCHO-PASS】

第21章 理想郷を求めて


首都レジムチュゾムで乗客を降ろし、運転手を病院に運び仕事は終わった。老人が唯一身につけていた宝石を渡そうとしてきたがそれを断り、逃げるように河原へ来てしまった。とりあえず一服したい。だがもう一本も残っていなかった。ただそれだけだが少し苛ついてしまう。そんな時、少女の声が呼びかける。彼女もバスの乗客だったらしい。こんな小さな子にもお礼をされたらたまったもんじゃない。
だが彼女は違った。武装ゲリラを蹴散らした狡噛の強さを見て弟子入りを懇願してきた。思っても見なかった。とりあえず近くの食堂で食事をさせながら話を聞くと、親を殺されて仇を打ちたいらしい。共感できないこともない。以前の自分も同じことを考えていた。だが確実に甘かった。人を殺すというのはその事実が一生負い目になる。今、自分は実際にソレに苦しむ日も多い。それをこの少女にも負わせることに責任は持てない。すぐに断った。

「あなたが戦いを教えてくれていた時とそうでなかった時…どっちが生き残る可能性が高いでしょうか?」

ため息がでる。そんなことを言われたら、教えずにこの子が死んだら自分のせいみたいじゃないか。

「お前、交渉がうまいな…」

このご時世に護身術ぐらい身につけていて損はない。そう考えることにした。
幸い彼女のツテで宿を探す手間も省けた。そこは町外れののどかな土地だった。自然が多く良い風が吹く。宿までは少女の叔父のキンレイという男が案内してくれた。丘の上にある古民家だった。まともな家に居座れるのも久しぶりだ。この少女と二人でこの家で生活することになる。まだ十四歳で、苦しい過去を通ってきたのにまるで太陽のように笑う、名をテンジンといった。


まずは二人で生活できるように家を掃除した。布団や絨毯の埃を払い、床を磨き、食器を洗い直した。ふと、上から何か物音がした。何か天井裏に居るのだろうか。狡噛が行ってみるとそこは食べ物を乾燥させたりする部屋になっていた。とくに何もいない。二階に降りるとテンジンが待っていた。

「今の何の音?」

彼女も不思議に思ったらしい。それほど大きな音だった。

「ここには何もいなかった。屋根の上かもしれない。」

一旦外に出て屋根を見上げると、その音の主はいた。狡噛についてきたベールクトだった。テンジンは驚いて狡噛の後ろに下がる。峠道でもそうだったが昼間に近くまで降りてくるのは珍しい。
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