第18章 楽園事件:9
何にせよ知識は生きる上で必要だ。帰ったら今後については聞いてみよう。
その日はとくに大きな事件もなく、ひたすら報告書の作成で終わった。部屋に戻るとダイムが出迎えてくれるので屈んで頭を撫でる。はと言えばまだパソコンの前にいた。画面をじっと見つめている。背後に立とうが見向きもしない。無言で肩に手を置くと、全身がピクリと動いて瞬きしていた。やっと振り向く。
「あ…ギノさん。」
「まさかずっとやってたのか?」
「はい。」
表示されている画面には最近の世界の経済状況が出ていた。これは見せた資料のものではない。
は知らないことがたくさんあるのでつい夢中になったと言っていた。
「渡した資料から脱線したな?」
まぁありがちだ。最初だから仕方ないだろう。
「いえ、全部読んだので関連する物を自分なりに検索して調べました。」
「?」
宜野座は声にもならなかった。そんな簡単に終わる量ではなかったはずだ。
「い、いや!かなりの量だぞ。俺の学生時代すべての資料だ。いくら俺が上手くまとめていてもそんなスピードで終わるわけないだろう!」
「終わりました。ちゃんと全部読みましたよ?」
テストするんですよね、と椅子をくるりと回転させて向かい合う。なぜこんなにも真っ直ぐ見つめてこられるのか不思議だった。普通はテスト前なんてドキドキするとか不安になるとか何かしらの感情に囚われるのに、彼女はなぜか自身に溢れている。
宜野座は数学の計算問題や、英単語など、過去のテストから一部を抜粋してやらせたが。
(全問できている…!!?)
さらりとテスト終えては涼しい顔をしていた。
「テストって結構簡単ですね。」
なぜだ。なぜそんなにできる。狡噛といいといい明らかに成分が違いすぎる。いや、狡噛よりも凄い。異常だ。
「は記憶力がいいな。前からそうなのか?」
確か狡噛の残した資料にはそんなことは書いていなかった。
「そんなことありませんよ。特に狡噛さんと出会う前はよく思い出せないです。」
「狡噛と出会って以降に記憶力が発達したのか?」
わからない、とは言う。ただ、思い返せば研究所にいた頃、阿頼耶の持っている資料をすべて読みあさったがその内容は全て覚えているという。