第14章 楽園事件:5
翌日。正午、快晴。しかし寒い。夕方にはさらに寒気が流れ込み雪が降るかもしれないと天気予報は言っていた。
冷え込む事を考えて宜野座はニットを着てきた。ネイビーのニットの下はストライプのシャツ。Vネックから衿が覗く。それに某ハイブランドのウールコートは監視官の時から着ている。ブランドで昔は固めていたがもはやそこまで気にしなくなった。だが高いものは長持ちしていい。両手にはめた革手袋をコートのポケットに入れてを待つ。次第に鼓動が早くなった。緊張する。こういうのは慣れていない。
正午を二分過ぎた。やはり駄目なのだろうか。そう思いながら遠くを見ていると近くまで誰かが来たことに気が付かなかった。膝上丈のミリタリーコートのフードを深く被り、縁についたファーが顔を隠してよく見えない。黒いパンツとやや汚れたスニーカー。どこの少年かと思った。だがフードの中を覗くとアンバーの瞳が異質な光を放つ。
驚いて宜野座は一歩下がった。
「っ!か!」
「すみません、ちょっと遅くなりました。」
いつもの白に汚れのあるワンピースの方がまだ女らしさが見える。今日のはまるで少年だ。亮一の服でも借りたのか、それともこういう趣味なのか。とりあえずフードをめくった。するとすぐにまた被られた。
「まだ雪は降ってないぞ。」
「髪を見られたくないんです。白い人っていないじゃないですか。」
そんなことをいちいち気にしているとは思わなかったが、人と違うことに彼女は誰より敏感であることを忘れていた。
宜野座は笑いながらもう一度フードをめくった。今度はゆっくりと。
「お前の髪は綺麗だ。瞳の色にも合ってる。」
その白さに周りは目を奪われるだろう。神聖さがあるからだ。少なくともそれで色相を濁らせるやつがいたら何かやましいことがあるに違いない。
「気にするな。さ、行くぞ。」
白い頭をくしゃと撫でて歩き出す。その少し後ろをがついてくる。懐かしい。あの時もそうだった。彼女は狡噛の後ろをついて歩いていた。親を追う子のようだった。今は大人になり、そうは見えなくなったかもしれないが。
常守は公安局前の通りに車を止めて待っていた。宜野座は後部座席のドアを開けてを運転席の後ろに座らせると外からドアを閉めて、自分は反対側から後部座席へついた。