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はごろも折々、蝉時雨 ( 鬼滅*風夢 )

第19章 :*・゚* 星月夜に果実は溺れ*・゚・。*:




 ──愛している。



 そのたったの一言が、こんなにも胸を突くなんて。

 再び目頭が熱を帯び、視界が滲む。




「···私の気持ちは、この先なにが起きたとしても、変わらないわ」




 命には、等しく、死が訪れる。

 寿命の長さ云々ではなく、"絶対" はないという平等。
 生きとし生けるもの、必ず明日を迎えられるという保証はない。

 それでも思う。思ってしまう。この世に鬼などいなければ、どれだけよかっただろうかと。

 実弥には、年老いるまで息災でいてほしい。そう願う自分は今も変わらず在り続けている。

 互いにしわしわの手を取り合い、仲睦まじく歩く老夫婦を見て憧れたこと。

 実弥と末永く共にあれたらと思う自分が日に日に大きくなってゆくこと。


 ······時折、実弥を失うかもしれない恐怖が、心を蝕みにやってくること。





「───命脈の果てまで、ずっと」





 数多の憂いは紡げずに、背中合わせに存在している確かな想いだけをこの場に託した。

 鬼殺隊として実弥を誇りに思う気持ちも紛れもないものだ。だからこそ、悔いのないよう生きてほしいと強く願う。

 切なげに笑んだ実弥の顔が、ぽすんと耳もとに落ちてくる。

 優しい吐息。

 実弥の匂い。

 重ね合わせた掌の熱が溶け、鼓動が心地よい音を奏でる。


 無垢に触れる静謐 (せいひつ) なひとときと、時折水中で生まれる気泡のような心細さと、天照らすような屈託のない光。

 実弥は私に、独りでは知り得なかった愛の麗しさを教えてくれた。


















「────…俺もだ」





 星乃を見つめ、実弥もまた想いのすべてをただ一言の同意に託した。

 多くを語れば上面になる。星乃の想いがひしひしと心髄に響くからこそ、揺蕩う眼差しから決して視線は背けずに。

 やがて眠りに落ちてしまった星乃の身体を背後から抱き、実弥も同じ布団へ沈んだ。

 雪のようなうなじに唇を乗せ、願う。












 もう二度と、大事なものが不条理に消えてなどしまわぬように。







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