【金城剛士】超感でぃすてにー【B-project】
第3章 秋
ライブが始まって、大好きなバンドの曲で大盛り上がりした。
あっという間に最後の曲になり、バンドのボーカルが喋っていた。
『今日、初披露の新曲です。これから来る冬にピッタリの、曲です。それでは、聞いてください。ソラニン』
イントロで、涙が出た。
10年後の世界で、1番聞いていた曲だったから。
ここが10年前で、何時帰れるのか、向こうのみんなは心配してないか、仕事は、家はーーー色々な気持ちが溢れ出して、大泣きしてしまった。
剛士くんは私を見てギョッとしたけど、すぐ肩を抱き寄せてくれた。傍から見たらただのメンヘラ女だな。頭の片隅で冷静にそんなことを考えながら剛士くんに身体を預けていた。
ライブが終わって、泣き腫らした顔を見せたくなくて、肩に持たれたまま、退場の波が去るのを待った。
「お前、最近らしくねーよ。なんかあったのか。」
電車を下りて、帰り道にさりげなく問われた。
でもこれ以上剛士くんに迷惑かけたくなくて、何も言えなかった。
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「見つけたぞ。あの女だ」
2人の後ろ姿を見つめる不穏な影ーーーーーー