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Emotional Reliable

第11章 Emotion




「あいつ、なにしてっかな...」
ごろん、と寝返りをうち凛はケータイを開いた。
表示される日付は8月21日。
地方大会も終わり、凛は一週間のオフで実家に帰ってきていた。
普段使っているものとは違う馴染みの悪い枕に頭を預けて、ごろごろと寝返りをうつ。


凛はメールボックスを開いた。汐とのメールのやりとりは約1ヶ月前のあの日から止まっている。

あの日の夜、凛は汐と喧嘩した。
喧嘩というよりは自分が一方的に怒って汐にひどいことを言った、という認識だった。
地方大会が終わった今、やはりあの夜汐が言ってたことは正しかったのだと痛感している。
あの時の汐が見せた悲しい笑顔が何度も頭の中で浮かんでは消えた。


凛は目を伏せ、もう2週間ほど前になる地方大会の時のことを思い起こす。

汐が言っていた通り、男女同じ会場だった。
会場の下見に行った際に男子のチーム、女子のチーム、さまざまなチームと出くわした。
その中にスピラノ水泳部もいた。

凛は内心複雑だった。この時、凛は汐に会いたくなかった。どんな顔していいか分からなかった。
なるべく意識しないようにした。
しかしそう心がけても無意識に汐の姿を探していた。
〝なるべく意識しないように心がける〟というのはもう既に意識している、ということを誰かが言っていた。
誰かなのかは知らない。けれどその通りだと凛は思った。

汐と目が合った。
やや距離はあっても視線がぶつかったのがよくわかった。
以前なら微笑むか、おどけたようないたずらな笑みを向けてくれたであろう。

しかしこの時は違った。
目線を落とし、つらそうな表情をしていた。
目を逸らされたショックよりも、自分のせいで汐にあんな苦しそうな顔をさせたことに感じた罪悪感のほうが凛の胸を苦しくさせる。

結局その時はそれ以上汐のことを考えないようにした。
見ていても埒があかないし、自分がぶつけた言葉も取り消せるわけでもない。
今は翌日の自分の試合とリレーのほうが大事だと自分に言い聞かせて会場を後にした。


凛は目を開き、そしてまた伏せた。
今度は試合前日の夜のことに思いを馳せた。
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