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夢幻の如く

第11章 帰還3


「ちょっ、如月ィ! いきなり驚いたぞ。ってか、さっきの声は何だ? あんな声、初めて聞いた」

「……猫……です……。猫……」

いや、明らかに嘘を吐いただろう。
というか、自分に言い聞かせる? ような感じだ。
だが、気になって仕方がない。

「見に行こう」

「な……っ‼︎ だっ、駄目です! 絶対駄目です。お父上様がお待ちです」

珍しく動揺する如月に、余計気になってしまい、無理矢理、彼女の腕を擦り抜けた。

「きゃぁぁぁぁぁぁっっ! あつ姫様っ!」

「見て来る!」

如月に軽く手を振り、タンタンと軽い調子で四階まで階段を駆け下りた。
そこは、居室がある三階や五階と違い、何も無い広い空間だった。
柱がやたら多いのは、上を支える為だろう。
視線を張り巡らせ、声のする方に歩いて行った。

「……やぁぁ、あっ、あぁん……あぁ……」

「おい、声がデカいぞ……」

「あっ、あぁん、誰も……居ないわよ……」

「クソッ! もう駄目だっ! 出すぞ」

「あっ、あぁぁ、やあぁぁぁぁ……」

男女の声とパンパンと叩くような激しい音が聞こえ、いよいよ心配になり、広い空間を駆け抜けた。
よく見ると、空間を囲うように、端は部屋になっていた。全体が板の間のせいか、目の錯覚で何も無いように見せているようだ。
しかし、声のする部屋以外は、人の気配が無い。

「ふぅん、周りの部屋に隠れて、敵が来た時、ここで食い止めるのか……最後の砦だな。ってか、ここまで来たら駄目だろ。……じゃなくて……」

ブツブツ言いながら、板戸に手を掛けた。

「おーい、大丈夫かぁ?」

声を掛けながら、板戸を少し開けた。
と、私の身体が宙に浮いた。
振り向くと、顔を痙攣らせた信長が、私の両脇に手を差し込み、抱き上げていた。

「あっ、父上〜今ね……」

「あつ姫、お前が気にするような事は何もない。如月の悲鳴の方が余程だ」

「えぇっ⁉︎ だけど、女子の泣き声とパンパンって叩くような音がしたよ」

私がそう言うと、信長は、私の身体をクルッと自分の方に回した。
すると、信長の後ろに居た如月が見えたが、彼女の顔も引き攣っている。

「……? 父上? 如月もどうしたのかな?」

「如月、あつ姫が心配しておる。部屋を検分せよ」

「……承知」

短く返事をした如月が、バァーンッと勢いよく板戸を開けた。
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